伊藤幸紀法律事務所

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 幸紀先生の法律相談Q&A 


  @「自己破産のケース」

 ☆40代Aさん(男性)の場合

 会社員のAさんは、パチンコや競馬等のギャンブルに、多額のお金を使い、最近では貯金も使い果たしてしまいました。
 ギャンブルの資金調達のため調達のため、消費者金融等、合計5件で借金を重ね、借金は350万円となってしまいました。
 Aさんの借用書を偶然見つけた奥様は、自分の知らないところで大変なことになっていると、あわてて法律事務所に相談しました。夫の行為は許せない部分もあるが、奥様は夫の再起を信じ、自己破産をして、夫と二人で新たな人生のために頑張っていきたいと考えています。



幸紀先生より

 破産法第252条1項柱書によりますと、『裁判所は、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。』と規定されています。また、同条1項第4号によりますと『浪費又は賭博その他射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと』と規定されています。そうすると、ギャンブルが原因で借金を重ねた場合、免責許可の決定がなされないように見えます。

 しかし同条2項に、『前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。』と規定されています。

  これはどういうことかと言いますと、ギャンブルを始めた経緯、あるいは、借金全体に占めるギャンブルでの借金の割合等を考慮して免責が認められることがあります。

 ですから、パチンコや競馬等のギャンブルに多額のお金を使い、借金を重ねたからといって、自己破産できないわけではありません。




 A「遺産相続のケース」

☆50代Bさん(女性)の場合

 未婚のBさんは、実家で母親と二人暮らしでした。
 父の死後、母が引き継いだ会社の経理等の仕事を行っていましたが、ある日、事故により母が足腰が不自由になったために、母の代わりに会社を切り盛りするかたわら、母の介護なども行うようになりました。
 Bさんは、会社や母親へ誠心誠意尽くしました。しかし、その母親が突然病気で亡くなってしまいました。
 母親は、夫の遺産相続で得た財産と、今まで住んでいた母名義の実家等、多額の遺産を残しました。生前、Bさんは母に、遺産の管理を依頼していました。しかし葬儀後、兄と妹から、すべて現金に精算して、3等分するように言われてしまいました。
 Bさんは、会社へ尽くしてきたことや母の介護をしてきたこともあり、実家はそのまま残して自分が住み、遺産の総額の半分を得たいと考えています。



幸紀先生より

 Bさんの場合、亡くなったお母さんの子供がBさん、兄、妹ですから、民法第900条柱書によれば、『同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。』と規定され、また、同条第4号によれば『子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。』と規定されています。

 これを法定相続分と言いますが、Bさんの法定相続分は3分の1となります。

 ただ、民法第904条の2第1項には、『共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。』と規定されています。

 これはどういうことかと言いますと、相続人の中で、亡くなった方の財産の維持または増加に貢献した相続人には、その貢献度に応じた金額を、法定相続分に加算して貰うことができるというものです。これを寄与分と言います。

 Bさんの場合、母の介護に誠心誠意尽くしてきたという事情があるだけでは寄与分が認められないと思いますが、会社を切り盛りしてきたことで、会社の財産の「維持または増加に貢献した」といえる場合には寄与分が認められて、遺産総額の2分の1を得ることができることもあります。

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